腕の良い職人は、事故を起こさない!

 本会は、建設業一人親方に労災保険特別加入のサービスを提供しておりますが、 会員の皆様が災害に遭わないよう災害防止のための指導や情報提供も実施しております。
 昔から職人は「怪我と弁当は自分持ち」といわれておりますが、正に一人親方は そのとおりで、「自分の身は自分で守る」という気概をもって、作業は拙速や省略を避け、確実な点検のもとに安全第一で進めることが肝要です。
   災害や事故が発生すると「まさかそんなことが起こるとは思わなかった。」とか「まさかそんなことをするとは思わなかった。」ということを聞きますが、災害対策に想定外があってはならないのであって、危険予知活動を通じて災害発生の要因を想定内にしてその防止対策を講じていくべきである。
 プロ野球の野村元監督が「勝に不思議な試合はあるが、負けるに不思議な試合はない。」とおっしゃったとおり、「起こるのに不思議な災害事故はない。」、すなわち、発生要因に対する対策がなされていなかったから災害は発生したのであるということを再認識することが「災害0」につながるのでないでしょうか。
 建設業は、その職場環境から死傷災害が多く発生しています。平成30年の発生状況で見てみますと次の通りとなっています。

死傷災害の建設業の割合

また、死亡災害も多く発生していて、令和元年における一人親方の死亡災害は60件で、その内訳をみてみますと、墜落・転落災害が40件(うち梁・屋根等から14件)を占めています。このことからも高所作業における安全対策、特に安全な足場の確保、安全帯(墜落制止用器具)の装着を徹底する必要があります。
 一人親方の場合、単独作業が多いこと等もあって、ややもすればこれらの対策がおろそかになりがちですが、今一度自身の安全確保を第一に考えるという基本に立ち返って作業を進めて欲しいものです。事故の後で「しまった、ああすれば良かった」では遅いのです。
 災害発生事例も紹介していますので、「他山の石」として自身の安全対策に生かしていただければ幸甚です。

 

災害防止の基本的な事項

 災害に遭わない、事故を起こさないために次のことを日々の作業の中で実践しましょう。

 現場の状況をよく知る

 自分が作業する現場の状況をよく知ることが災害防止の第一歩です。
 どのような設備があって、その危険性、作業工程など十分に把握しておく必要があり、不明なことはよく確認しておきましょう。
 そのために、現場所長などに確認することはもちろん、工程会議への出席、朝礼や危険予知活動などにも積極的に参加しましょう。
 特に、当日の自分の作業に関連するものについては関係者と工事の進め方、合図などについて連携をしっかり図っておきましょう。

 整理整頓の励行

 安全は、整理整頓に始まり整理整頓で終わるといわれるように、現場では「5S運動」として推進されており、その励行が無事故につながります。
 整理とは、必要な物と不要な物を区別し、不要な物を処分すること、整頓とは、必要な物をすぐに取り出せる状態にしておくことです。
 整理整頓がまずいと、工具や材料を探す、作業場所を確保するために移動させる等のために不要な作業が生まれ、安全上だけでなく作業効率の点からも問題があります。
 雑然とした現場は見た目も悪く、施主や元請の評判も落とすことにるので、整理整頓を作業の中の一つとして習慣化することが災害防止にもつながります。

 段取りの良し悪しが災防のキーポイント

 仕事は、「段取り8分」といわれるように、作業に取り掛かる前に作業の順序や手順を良く考え、機器工具や材料を揃えることが災害防止からも重要です。
 段取りが悪いと工程が行きつ戻りつしたり、必要な工具や材料がなかったりしますし、不要不急なものが現場を占拠して現場を狭くして作業効率の面からも好ましくありません。

 点検・確認の励行

 点検は、機器設備の保守のためだけでなく災害防止のうえでも重要で、とくに、安全装置の点検は最も重要です。
 点検の実施時期には、始業、月例、年次、完成時、異常天候後等があり、災害防止上重要な機器設備については法令でその実施を義務付けています。
 一人親方の機器は労働安全衛生法の適用はありませんが、法令に従って点検することが事故防止につながります。
 法令で定める点検はこちらのとおりとなっていますので、点検表などに基づいて確実に点検しましょう。
 始業点検が義務付けられていない機器についても、点検を行うことが事故防止にはもちろん機器の保守上も有効です。
 また、機器の掃除や停電作業時のスイッチ類の確認、安全装置や警報装置の作動確認等も事故に遭わないために、さらに、スイッチ等を入れる際の確認も事故を起こさないために重要です。

 指差呼称、一人KYの実施

 腕を伸ばして対象を見つめて指差し、声を出す指差し呼称は、
意識レベルを正常でクリアーな状態にして誤判断、誤操作、誤作業を防ぎ、災害を未然に防止するのに役立ちます。
 一人KYは、作業を行う前、その作業にひそむ危険を考え、これに対する対策を決め、実践する活動です。
 一人親方は、単独作業が多いですので、日々の作業のなかでこれらの手法を実践することが事故・災害防止を図っていくうえで有効です。

 保護具の装着

 危険、有害な作業では、作業に応じて保護具を装着することが法令で労働者に義務付けられていますが、一人親方にとってもその危険性や有害性は何ら異なりません。
 保護具を装着すると視野が狭くなる、作業がやりにくい、面倒くさいなどの理由をあげて未着用で作業を行っている光景を見受けますが、事故防止や職業性疾病防止には保護具の装着が有効です。
 法令で義務付けられている保護具は、こちらのとおりですので、進んで装着しましょう。そのことが自分の身を守るとともに元請けの印象もよくなるものと思います。

墜落・転落災害の防止

  建設業における墜落・転落による災害は、死亡労働災害の約4割を占めており、労働安全衛生法でも、次のとおり墜落・転落災害を防止するための対策が規定されております。

 高所作業は、手すりのある足場で

1 労働安全衛生規則第518条には高さ2m以上の個所で作業を行うときは、足場を組み立てる等により作業床を設けなければならないと規定され、同規則第563条に詳細な規定がおかれています。  労働安全衛生規則に定める足場の詳細な基準
  作業床、手すりの解説はこちら⇒作業床等の解説
 足場からの総合的墜落・転落防止について
2 木造等の低層建築においては、建方作業時に墜落災害が多いことから足場先行工法が推奨されております。
  足場先行工法のガイドライン
3 現在、木造建築等の現場ではくさび緊結式の一側足場が多く用いられておりますが、本(二側)足場が原則で、本足場の設置スペースがない等の場合に一側ブラケット足場の設置が認められております。
 くさび緊結式の一側足場にあっても
   根がらみや敷板・敷角の設置
   建地の間隔は1.85m以下(超える場合は梁枠等で補強)
   地上第一の布は2m以下
   壁つなぎ又は控えを垂直方向5m,水平方向5.5m以下ごとに設置
等の規定は適用されますが、作業床については適用除外となっていて、作業床の幅、床板間のすき間、手すりや幅木の設置は規定せれていません。
 しかしながら、労働安全衛生規則第519条に作業床の端で墜落するおそれのある個所には手すりを設けなければならない(困難な場合は防網又は要求性能墜落制止用器具)、と規定されていることから手すりを設置しなければならないことになります。
 足場先行工法の通達では、最低でも作業床の幅24cm、すき間5cm以下、手すりを75cm以上の個所に設置と示されています。

 足場の建地については、屋根からの墜落防止のため軒先から1mほど延ばし、軒先から高さ90cmのところに手すり、高さ30cmのところに滑り止めを設置することが推奨されています。
 また、足場の手すりは墜落するおそれのある個所に設置することになっていることから、作業床と建物の間隔が30cmを超える個所にも設置しなければなりません。
4 足場の作業床は、屋根工事、軒先工事、壁工事の都度、作業に適した高さに盛り替え、手すりを設けて作業を行うべきで、決して作業床上で脚立などを使用してはいけません。
 なお、作業床の盛り替えをするときは現場責任者の許可を受け、作業が済んだら元の状態に戻しましょう。
5 足場は、その日の作業を開始する前や悪天候、地震の後の点検が労働安全衛生規則第567条で義務付けられております。
 点検表はこちら 枠組み用 単管用 くさび緊結式用
6 低層建築作業においては、屋根からの墜落・転落災害も多く発生しており、次のような防止対策を講じましょう。
 屋根工事の安全対策はこちら

 作業床、開口部からの墜落防止

  高さ2m以上の作業場所で墜落するおそれのある個所や開口部には手すり、囲いの設置が義務付けられています。
これらが困難なとき、又は場所的制約、時間的制約から足場の設置による作業床の確保ができないとき防網の設置又は要求性能墜落制止用器具(安全帯)の使用が規定されています。
 屋根上の作業、梁上の作業、2階床端の作業などが該当しますので、要求性能墜落制止用器具(安全帯)の使用、防網の設置が必要です。

 脚立(うま)足場における作業の安全確保

 脚立(うま)足場の使用に当たっては、
1 高さ2m以上にして使用しない
2 脚立(うま)の間隔は1.8m以下とする
3 足場板は固定する
4 足場板の重ね20cm以上、はね出しは10~20cmとする
等の措置が必要です。

 現在は、手すりが設置された作業台または高所作業車等のリースも行われていますので、その利用が安全かつ効率的に作業できるものと思います。

 脚立における作業の安全確保

脚立は、滑り止めのついたものを使用し、止め具等は外れないようしっかりと止めること。
また、脚立からの転落を防止するため次のような使い方をしてはいけません。

 1 作業に必要なふみ面のないものを使用
 2 脚立の天板に立った作業
 3 傾斜、段差で脚立の足を継ぎ足して行う作業
 4 立てかけてはしごの代用として使う
 5 片足を脚立、もう片足を他の場所にかけて使う
 6 脚立上で部材の加工をする
 7 開口場所付近で使う
 8 脚立の代わりにうまを単独で使う
 9 高さ2m以上の脚立を単独で使う
 さらに、脚立から身を乗り出して使用するのも危険ですから面倒がらずに、適切な位置に移設して使用しましょう。

 移動はしごの使用上の注意事項

移動はしごを使用するときは、次の事項に注意して下さい。
1 はしごは、幅30cm以上で滑り止めのあるものを使用    する
2 はしごの上部は60cm以上突出させ、
 上部を固定する
3 立てかけ角度は75度程度とする
4 工具等を手に持って昇降しない
5 履物は滑りにくいものをはき、
 泥などを落とす
6 はしごの上で作業をしない

 スレート屋根からの墜落防止

スレート屋根から墜落して 
例年数多くの人が尊い命を落としているのに後を絶ちません。
 その理由は、フックボルトが確認でき、母屋の上を歩けば大丈夫と安易に考えて作業を行うことにあります。
 経年劣化したスレートは脆くなっており、わずかでも母屋から足を踏み外すと破断し、落下することになります。
 労働安全衛生規則第524条では、幅が30cm以上の歩み板を設け、防網を張る等の踏み抜き対策を講じるように定められています。
 しかしながら、スレートで高さの危険が認識されないことや短時間で終わる作業が多いことから実施されていないのが実情である。
 いったん発生した場合の重篤性に鑑み、必ず、歩み板を設置し、併せて防網を張る(安全帯の装着は現実的にはかなり厳しい)ことが必要です。
 それにしても防網は、墜落災害の防止に有効であるにもかかわらず、なかなか設置が進みません。
 その理由は設置が面倒くさいことにあると思われますので、簡便に設置可能な防網が待たれます。

 [墜落制止用器具](安全帯)の使用

 手すり、防網、囲いなどの墜落防止措置ができないときは、墜落制止用器具(安全帯)を使用しなければなりません。
 作業床のない場所で、フルハーネス型のものを使用するときは労安法により特別教育を受けなければなりませんが、一人親方にはその適用がありませんので法的には義務はありません。
 しかしながら、点検の方法や正しい取り扱い、使用法を修得するためには必要ですので機会をとらえて受講することを薦めます。
 墜落制止用器具(安全帯)は、一度落下荷重を受けたものを使用してはならず、使用前に確実に点検しましょう。
 また、正しく着用しないといざというときに役立ちませんので、正しい着用法を身に着けておきましょう。

 木工機械による災害の防止

 丸のこ盤による災害を防止するため、
確実に歯の接触防止装置がに作動するように清掃、注油を行いましょう。
 錆びついたり、のこ屑が詰まってカバーが動かないということがないよう点検を十分に行わなければなりません。
 作業の邪魔になるからといって、カバーにくさびを入れたりひもで結わえるということをしてはいけません。 法令違反ですし、事故の元です。
 また、定置式の丸のこ盤には合わせて割歯などの反発防止装置を取り付けなければなりませんし、 携帯式を定置式にしたときも割歯を設けなければなりません。

 感電・火災の災害防止

 感 電 防 止

 配電箱は停電作業中の不意の通電事故を防止するためなどのために施錠すること。
 漏電遮断器を設置し、作動状態を点検すること。
 スィッチ類のターミナル部にはカバーをすること。
 移動電線は、床面をはわさないこと。やむを得ずはわすときはキャブタイヤコードを使用し、通路面では保護措置を講ずること。
 アーク溶接機は自動電撃防止装置の装備されているものを使用すること。
 アーク溶接機のターミナル部は絶縁テープで保護し、溶接棒ホルダーの通電部のカバーが破損しているものは取り替えること。
 接触するおそれのある架空電線は、移設または防護管の取付けを行うこと。
 高圧電線の場合は、離隔距離に十分留意すること。

離隔距離とは直接電線に接触していなくても放電により被災する距離のことです。

 火 災 防 止

 火気の使用場所を決め、消火器等を配備すること。
 溶接作業を行う近隣に可燃物を置かないこと。
 有機溶剤等の可燃物,引火物は決められた場所に貯蔵し、これらのものが発散している場所は通風に十分留意すること。
 有機溶剤等の可燃性ガスが発散している場所で使用する電気器具は、防爆構造のものとすること。

防爆構造とは可燃物の着火源とならないように、特別な技術的対策を講じたものです。

 作業主任者、就業制限、特別教育

 労働安全衛生法では、災害を防止するため、作業主任者による作業の指揮等、有資格者や特別教育受講者による作業の実施が定められています。

 作業主任者の選任

 労働安全衛生法第14条で、危険または有害な作業のうち政令で定めるものは、一定の資格を有する者を作業主任者として選任し、労働者の指揮などを行わせなければなりません。
 一人親方の場合は適用がありませんが、手伝い等を雇った場合などは必要となりますし、災害防止のための知識を得るためにも資格取得は有益です。
 作業主任者の資格には免許と技能講習があります。
 建設業に関連する作業主任者はこちら

 就 業 制 限

 労働安全衛生法第61条で一定の危険または有害な業務には、免許取得者、技能講習修了者でなければ就かせてはならないと規定されています。
 この就業制限業務については、労働者がいる現場では一人親方にも適用されますので、資格のない一人親方が就くことはできません。
 建設業に関連する就業制限業務と資格はこちらをご覧ください。

 特 別 教 育

 労働安全衛生法第59条で一定の危険または有害な業務に従事す労働者には当該業務に関する特別教育を受けさせなければならないと規定しています。
 一人親方には適用されませんが、事故に遭わないためにも受講するのが望ましいことです。
 建設業に関連する特別教育が必要な業務はこちら

 熱中症の予防

 熱中症は高温多湿の環境下で、体内の水分と塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりして発症します。
 具体的な症状としては、めまい、失神、筋肉の硬直、大量の発汗、吐き気・嘔吐、意識障害、痙攣、高体温などがあります。
特に、高齢者は、暑さや水分不足に対する感覚機能が低下し、暑さに対するからだの調整機能も低下していることから注意が必要で、また、糖尿病や高血圧症などの人も注意が必要です。
 予防するためには、
  ・自覚症状がなくても定期的に水分塩分をとる
  ・睡眠をしっかりとり、過度の飲酒を控える
  ・WBGT温度が高いときは屋外での作業を控えることが必要です。
 なお、一人親方は単独作業が多いので、いざというときに周囲の者に知らせる手段(非常ベル、スマフォ等)を常に確保しておきましょう。
 予防にあたっては次の事項も参考にしてください。

WBGT温度とは、暑熱環境による熱ストレス評価を行う暑さ指数で、度数で表示されるが、気温とは異なる。
25度以上  警戒
28度以上  厳重警戒
31度以上  危険
気象庁のホームページで確認できます。

 職業性疾病の防止

(1)塗装作業では、換気を十分に行いましょう。
(2)粉じん作業、振動作業、騒音作業では、防じんマスク、保護めがね、防振手袋、耳栓等、作業に応じた労働衛生保護具を着用しましょう。
(3)塗装作業を行う一人親方は、少なくても1年に1回は有機溶剤に係る健康診断を受診しましょう。

 腰 痛 予 防

(1)不自然な姿勢での作業が継続する場合は、途中で休憩をとるようにしましょう。
(2)取扱う荷の質量を軽くする工夫をしましょう。
(3)腰痛予防体操をしましょう。
(4)荷を持ち上げて体を回転させる時は、ゆっくりと回すようにしましょう。
(5)腰をしっかり落としてゆっくりと荷を上げるようにしましょう。

 じん肺の防止

 じん肺は、鉱物性の粉じんを長期間吸入すことによって起こる、決して治ることのない病気です。
 じん肺を予防するためには、発じんを抑えることが重要ですが、設備や作業の状態により粉じんの飛散を防止で きないときは防じんマスクを着用しなければなりません。
 アーク溶接や岩石等の裁断の作業では、屋内、屋外を問わず防じんマスクの着用が義務づけられていますので、一人親方もこれらの作業を行うときは、じん肺を防止するために必ず防じんマスクを着用しましょう。
 なお、じん肺の健康診断は、その症状に応じて管理区分1から管理区分3までの段階に区分されており、管理区分1の者で3年に1回、定期に実施することになっていますので、一人親方も受診しましょう。

 災 害 事 例

 これまでに発生した災害は、我々に災害対策の手法を教示してくれています。災害対策は一つの方法で良いというものではなく。頻度や可能性などを考えて講じるものではなく、想定される要因に対しては全て対策を講じていくことが求められます。
まさかとは言わないことが安全対策です。
 次の災害事例の「再発防止対策」を参考に万全の措置を講じましょう。

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